いつまでも子どもの身体性
詩人の谷川俊太郎さんが亡くなりました。享年92歳。僕が谷川さんと阿佐ヶ谷のご自宅で対談させて頂いたのが、今から10年ほど前の事でした。月刊同朋で「表現の愉しみ」と題して2人で話をして欲しいという出版社からの依頼でした。谷川さんと対談するなど、予想もしていなかったので、作品はもちろんのこと、その飾らない人間性に強く惹かれて来た僕にとって、舞い上がるほどの喜びでした。そしていよいよ対談の当日、ご自宅の居間をお借りして、ハの字型に椅子を二脚セッティングして谷川さんをお待ちました、谷川さんの登場です。僕が緊張気味に会釈をすると、谷川さんはニコニコとやんちゃな笑顔を返されて、置いてある椅子を対面型に置き直しました。あわてて僕も椅子を対面型にして、二人はお互いに真正面で向き合う座り方になりました。谷川さんの持つ身体性が垣間見えた瞬間でした。谷川さんは人と接する時、話し相手と正面で向き合う習性をもっていらっしゃるのです。大人になっても失わない子どものような身体性を持ち続けていたからこそ、人の心に届く感性豊かな詩が生まれたのですね。谷川さん、ありがとうございました。