美しい所作
今回の散歩道では、お辞儀についてお伝えしたいと思います。僕が出張の時に利用する高速道路のインタ―近くに、大手自動車会社のディーラーの店舗があります。ある日、そこで働いている若い男性社員2名の見事な接遇ぶりに心が洗われました。自家用車の運転席のお客様とにこやかに談笑した2人は、玄関口で丁寧にお辞儀をしてお客様をお見送りしました。そして去って行く車に向かって再度お辞儀をしました。ここで顔を上げてオフィスに戻っていくのが当たり前に見かける接客の動きなのですが、2人は違いました。もう見えなくなったお客様に向かって、もう一度感謝の一礼をしたのです。そして顔を上げて、柔らかくお互いにアイコンタクトを交わして店舗に戻って行きました。その流れるような美しい所作は、今でも目に焼き付いて離れません。一方、皆さんは停止礼という言葉をご存知でしょうか。歩きながらのお辞儀ではなく、しっかりと立ち止まってするお辞儀のことです。僕のお世話になった大先輩の音響家の先生は、停止礼の達人でした。年上の人にはもちろんのこと、年下の僕にも分け隔てなく停止礼をしてくださいました。礼に始まり、礼に終わる。こんな時代だからこそ、日本人の一人として身につけたい美しい所作ですね。