おまかせするⅡ

館長の散歩道

1970年代、日本の舞台俳優が学ぶ演劇メソードや身体表現に、内外の様々な訓練法が取り入れられました。そのころ人気を得たのがヨガや太極拳、野口体操、野口整体などでした。筋肉を鍛えることよりも、脱力を中心に置いた野口体操では、独特の言葉で動きを表現しています。たとえば、地面から「ブラ上がる」と言う表現です。人は重力に逆らって拮抗して立つのではなく、地面から「ブラ上がる」。その他、床に寝転がり、にょろにょろと身体の力を抜く動きは、「ねにょろ」。ゴロンゴロンと転がる「にょろ転」等々。そして今回ご紹介するのが、やはり脱力を中心にした野口整体の捉え方です。良い姿勢を取ろうと身体を固めずに、自分の身体のロックを解除していくと、身体が小さく動きはじめます。動きを止めようと抵抗せずに身をまかせていくと、動きは大きくなり、やがて小さくなって静止します。たっぷりと息を吐いて、ゆっくり目を開けると、心と身体が安らかになっていることに気づきます。自分が自分がと頑張り過ぎずに、身をまかせること。キーワードは「おまかせする」です。興味深いですね。