演劇との出会い

館長の散歩道

高校生の頃、学生運動の嵐が吹き荒れて、僕の高校でもバリケード闘争が起こり、ついに学校はロックアウトになってしまいました。部活もできずに行き場のなくなった僕は、詩人の寺山修司さんが当時の学生たちに提唱した「書を捨て街に出よう」という言葉通りに、新宿歌舞伎町界隈をあてもなくうろついていました。そしてアートヴィレッジという雑居ビルのエントランスの立て看板が目に留まりました。「贋作 動物園物語」タイトルにつられるように階段を上がって中に入ると、30人ぐらいの人がすでに腰掛けて待っていました。こんな小空間で演劇を観るのはもちろんはじめての経験です。やがて、すまけいと大田豊治の二人芝居がスタートしました。コミュニケーションが取れない現代人を演じる二人の演技の凄まじさ、研ぎ澄まされた感性に圧倒されてしまいました。そしてラストシーンが終わった瞬間、観客から割れんばかりの拍手が贈られました。僕は心の中で叫けびました。「これだ!これこそ僕がやりたいこと、いや、やるべきこと!」演劇との衝撃的な出会いでした。記憶が消えない内に、観終わった舞台のストーリーや演技を細かくメモにして書き残し、高校の友人を誘い込んで、その年の文化祭で上演しました。ロックアウトの解けたこの時の舞台が、その後の50年を越える演劇活動の原点になりました。