失敗するから面白い
物を開けるのが、苦手です。お弁当に付いている醤油やドレッシングなど1回で開いたためしがありません。冷静に袋の切り込みを見つけて開ければ良いのでしょうが、それが待てません。これが最後と、思いきり千切ると醤油が服にビチャ!情けないです。電車の自動改札を通る時もカードをかざすとピンポン、ピンポン。1回で通れない時のカッコ悪さ。失敗にきりがありません。でも落ち込まなくても大丈夫です。多くの演劇人が尊敬した名優で舞台演出家の千田是也先生が良いお手本です。学生時代に千田先生の演出を受けられたのは、今でも僕の誇りです。ある寒い冬の日、駆け出しの演劇修行の僕たちを、先生がご自宅の書庫に招き入れてくれました。書棚の演劇書を、かじかんだ指でめくっていると、先生が石油ストーブを持って来て火をつけてくれました。すると!ストーブからモクモクと煙が上がりはじめました。慌てて調整しようとストーブと悪戦苦闘する先生。普段はご自分でストーブを付けたり消したりする事などないのでしょう。てんてこ舞いの先生の姿に、僕たちは思わずほっこりしてしまいました。完璧な舞台を創り上げる先生も、人の子だったんですね。