キーワードは脱力

館長の散歩道

新春のお祝いを伝えようとしていたところに、大変な映像が目に飛び込んで来て、思わず体が凍り付きました。この度の被災・事故でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますと共に、一日も早い復興を心から願っております。公共の文化施設のサザンクス筑後は、これまで以上に皆様の安全・安心を第一に考えて運営してまいります。サザンクスは、人と人が分断されるのではなく、柔らかにつながる広場のような存在でありたいと考えています。どうぞ本年もよろしくお願い致します。さて、昨年の師走にサザンクスは「こんにゃく座」と連携して、オペラ「あん」を上演しました。こんにゃく座は、東京芸大で活動していた「こんにゃく体操クラブ」が母体となって1971年に発足したオペラ専門劇団で、日本語のオペラ作品をレパートリーにしています。こんにゃく座という変わったネーミングの由来は、歌唱の身体訓練や演技訓練が、こんにゃくのように、ゆるゆる・くねくねしていると、学生たちに親しまれたからだそうです。それまでの筋力を鍛える身体訓練法の枠を外して、身体の力を抜く体操を編み出すことにより、日本語の歌詞がはっきりと聞き取れる歌唱法を手に入れました。以前「館長の散歩道」で紹介しました野口三千三先生の「原初生命体」の考えかたに通じていて、とても興味深いものがあります。心の緊張を解く鍵は、身体の緊張を解くことにある。柔らかさのキーワードは「脱力」です。どうか穏やかな年になりますように。