今年もいつものように桜が咲いて、いつものように風に舞いながら散っていきました。この時期に出会えた二本の映画をご紹介します。一本は黒澤明監督の名作「生きる」をイギリス版にリメイクした「LIVING」。もう一本は、パリの街の美しさを背景に描き出されたフランス映画「パリタクシー」です。どちらも観る人の胸を打つ素晴らしい作品でした。そして二作品に共通しているのは、ベテランの名男優と名女優の深く抑制された、真実の演技でした。「LIVING」で主人公を演じたビル・ナイは、舞台俳優からキャリアをスタートして、その後は舞台や映画で多数の賞を獲得して来た73歳の名優です。一方「パリタクシー」で92歳のマダム・マドレーヌを演じたのは、なんと94歳の現役俳優で、フランスの国民的シャンソン歌手のリーヌ・ルノーです。二人に共通しているのは、チャーミング!マドレーヌは言います。「微笑むたびに人は若返るのよ」。二人の温かい人間性にすっかり魅了されてしまいました。