明けましておめでとうございます。昨年は思いもかけないコロナ禍に翻弄された日々でした。予定していたサザンクスの事業のほとんどが中止になり、多くの方々にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申しあげます。またそんな状況下にあっても、芸術文化の灯を消さぬようにお力添えを頂きました皆さまに心から感謝いたします。どうぞ本年もよろしくお願い申し上げます。さて新年を迎えまして、あるホスピスの院長先生に伺ったお話をお伝えします。末期がんにかかっているお母さんと付き添っている娘さんのお話です。お二人は本当に仲の良い親子で、いつも柔らかい微笑みが絶えずに一日一日を穏やかに過ごされていたそうです。そして、お別れの時が来ました。お母さんは娘さんに落ち着いた声で「いってきます。」とおっしゃったそうです、それに対して娘さんは「いってらっしゃい。」と、これもまた落ち着いた声でお応えになったそうです。「いってきます」は「行って来ます」という事。つまり「行くけれども、必ず帰って来ますよ」という言葉。「いってらっしゃい」は「行って、いらっしゃい」という事。つまり「行くけれども、きっと帰ってきてね」という言葉。お二人は別れるけれども、きっとまた会えるという深く強い確信を持っておられたのでしょう。そしてこのやり取りの後にお母さんは、すっと静かに息を引き取られたそうです。このお二人のお話は、人と人がつながることの美しさを私たちに教えてくれています。
何気なく日常で使っている「行ってきます!」「行ってらっしゃい!」の言葉も、大切に使っていきたいものです。